月刊誌「在家佛教」のご紹介
 バックナンバー 

平成13年11月号から
平成13年11月号
目 次
ページ
表紙 アフガニスタンの佛蹟・バーミアン 編集部 撮影
ブッタの道(23) 〔写真〕大佛塔・スリランカ
4
心は見えないが真野 龍海5

行雲流水
  恐竜の哄笑緒方 彰6
  夢か、うつつか藤井 教公8
  佛の掌の上で今成 元昭11
  無尽意菩薩の問い上村 勝彦13
  寅さんの名セリフ朝枝 善照16

家庭にみ佛を 続板橋 興宗20
生老病死平井 謙次38
波佐間 正己53
花のありか (上)西村 恵信46
一道を歩みつづけて 14
 他力というのは・・・・・・
大石 法夫31
「諸行無常」再考早島 大英44
「衆縁和合」の意味するもの田上 太秀58
自然と生命の物語 11上田 悟74
日本佛教の流れ 27
 天台浄土教の展開(五)空也
田村 晃祐80
玄裝三蔵法師 17
 玄裝三蔵の求めた唯識思想
山田 法胤86
加藤辨三郎・言葉抄 14編集部・抄録90

 今月の表紙85
 在家佛教催し物案内<古寺を訪ねて法話を聞く会>73
 編集後記97
 在家佛教講演会案内98
カット  杉本 順
ページのTOPへ

11月号より一部を抜粋します。
「行雲流水」より
恐竜の哄笑

緒方 彰
(元NHK解説委員長)

 私の貧弱な生物学の知識の中では、この地球という惑星の生誕、その中の生物の誕生、そして最も数としては少ない哺乳動物(昆虫と比べて丸で米粒のようなもの)の中で、更にそれ程帝王のようなふるまいはできるはずのない人(ヒト)の存在。然し私は人間でありそれ以外ではない。その宇宙の中の小さな人間が、まるで人間の為に宇宙は存在しているかのように勝手気ままに動き回っている。私は何だ、人間の機能とは何だ、何の為に細胞はできているのか。私の友人の医学者は自嘲まじりに「仕組が判っているのは一億分の一ぐらいかな。」と言い放った。
 だが人間社会はこのまるで判っていないものを、すっかり判り切ったように思い、子供をつくるかと思えば大量に殺りくする手段をせっせと考える。おかしくもあり、情けなくもある、あの何とか"ザウルス"とかいった大恐竜時代、彼らが今の人類よりかしこかったなどといえば子供でも馬鹿にするだろう。だが彼らは一億年以上この惑星に君臨したことは事実のようだし、それを或日、人間が大戦争して滅ぼしたなどというストーリーはコミックの大先生達も創作する勇気はあるまい。
 だが人間が二本足でアフリカ東部で立上って以来、まだ一ケタの万の年しか経っていまい。アフリカの黒人は何故黒いのか、北の人間は白く中間は茶系。何故。然しこんなことはまもなく解き明かされるに違いない。だがまだ殆ど人類が知らない宇宙の根元の因縁ごとが今後どのような変化をこの小さな地球という惑星にもたらすのか、今の所、少なくとも私に説明してくれた人は歴史上にはいない。
 話を一寸かえます。私の孫の一人が大学で農学を学んだが何か胸にすとんと落ちなかったらしい。そして卒業の一寸前から音楽にひかれた。親はがっかりしたらしい。「やるなら自分でやれ。」とつっ放された。孫は髪をのばし酒呑(しゅてん)童子か石川五右衛門のような異様な形にした。私はまだみていないが、「パパイヤ某」という音楽タレントに近いというので電話をかけた。「私はパパイヤの真似をしているのではありません。私に一番似合っていると思うからです。音楽はこの道が私の生き方として全力をかける道と感じたからです。」私は彼の言葉にすぐ別の道を歩けと説得する自信はなかった。
 この孫は少し前にやはり電話で「太平洋戦争?」「どことどこの戦争だったんですか。」と真顔で問うた。私はあっと口をあけた。そこで一応説明した。彼は真剣にまじろぎもせずに聞いて涙を流さん許りだった。自分と同じ年配の青年が敗戦を承知の上で死んでゆくことの悲惨さと誰一人批判できるはずもない人間の心情の高さを直観したのであろう。私は世代のくい違いと早さ、価値観の相違、そんなものの重さをその時いやという程思い知らされた。
 この夏、「首相の靖国神社参拝問題」という「政治問題」が世をゆるがせた。私は、ある首相側近の政治家に八月十五日の二週間程前に夜おそく電話した。「結論からいうとやめた方がいいと思います。これは宗教、哲学、民族感情とかいうことではなく外交問題、内政問題です。従ってあえて感情的にいえば中韓などのいい方は不愉快極まりない勘定高いテクニックの文句のつけ方で、日本内部、自民党内部のカードも使えると思ってやっていることです。そんなものにこちらがむきになればにやりということでしょう。但し、堂々たる外交文書を出して下さい。例えば"小泉内閣及び日本人は友好の上に日本とアジア問題を考えておりあえてそれに害を与えることは全く思いもしないことである。過去の歴史で誤りのなかった国がこの世のどこにあるだろうか。いいわけでなくあえて日本は近代史の見直しの中にいま日本国の改革をやろうとしているのです。"といったことを小泉声明として出してほしいといいました。
 その後の事は国民がみた通りだが、内政に悩む韓国、中国十二億の民の何人がヤスクニという名前を知っていたことだろうと思うと田中真紀子外相が改革の蛮勇を振っている外務省は一体何をしていたのかと不愉快極まりない。
 こんな話も思い出す。
 満州と中国本土を分ける山海関から先には日本陸軍は入らぬ構えをしていた。対抗して向かい側には蒋介石の軍がいた。その当時毛沢東の赤軍は蒋介石軍に敗戦を続け壊滅一歩手前まできていた。時に赤軍に軍師あり。彼の案は強力な日本軍を使って蒋介石の圧力を封じ、その間に日本軍はそっちのけで蒋介石軍を破壊する以外にないというものだった。その案は採択された。盧溝橋(ロコウキョウ)の深夜赤軍は対抗して軍を布く日中(蒋軍)両軍に向かって砲火を浴びせる、日中両軍はすわと許りに戦闘に入り日本軍が中国軍を追って南京に向かう。これがまぎれもない事実だと私が聞かされたのはずっとあとのことだった。社会主義革命大国の旗を上げたスターリンは一方では人類史上最大の殺りく者だと長く信じられていたが、私の親しい碩学は調べれば調べる程毛沢東の方が殺し方は一枚も二枚も上だといい放った。米国はナガサキとヒロシマの核殺りくは「南京虐殺」とは別だという。要するに未だ人間は人間のあるべき姿を知らず、やがて亡んでゆくだろうよと恐竜達の笑い声が聞こえそうな気がしてならない。

ページのTOPへ

平成13年12月号へ  平成13年10月号へ